結成のことば (1963年8月) 八月二四、二五日、東京に集ったわれわれは、全体の意志で東日本リアリズム演劇会議を結成しました。 われわれは現実にたち向って真実と美を追求する演劇芸術家として、いま祖国を掩っているきびしい状況から目をそらすことができません。アメリカと日本の反動的な結託が強行している投機は、ますます露骨で危険なものになり、このままでは、十八年前肝に銘じた、再び戦争の被害者にもまして加害者にも断じてなるまいとしたわれわれの誓いは、なしくずしにむしばなれ反故にされかねません。われわれは今日までそれぞれの場で、平和と民主主義そして国の独立を求める国民の斗いと結びつきながら、演劇創造と普及の活動をすすめてきました。働らく観客にうけとめられささえられることによって、これらの仕事はわれわれを勇気づけたばかりでなく、全く新しぃ滞劇状況をつくりだすことにもなりました。  更に気付いてみると、この状況が日本の各地点で、観客との共斗の中から誕生しているかぞえきれぬ真実があったのです。われわれは分散してつくられてきたこの新しい状況を演劇運動全体のものにしたいと思うのです。 状況のきびしさをかこって守勢をとるのでなく、すぐれた創造とうずまく普及のしごとを先手をとってうちたてていくーわれわれの演劇文化状況を主体的に展開していくためには観客に責任を負う集団が緊密に連結し、力量をつよめていく必要が、しかも急速にあります。  西日本リアリズム演劇会議が、まさに同じ時点で同じ必要から西日本十七集団を結集し、一年間に着実な成果をあげつつあることもわれわれの確信を強めてくれました。われわれは共通の目標を明らかにし、創造普及の土台になる演劇リアリズムの思想と方法を探求し、国民にとって必要有効なするどく豊かな舞台芸術を生みだす保証が、この結集にあると思います。  互いに交流しあい、学びあい、経験を理論に高め、さらに実践でたしかめあう真の連帯の中から、現在点を拠点とし、拠点文化の共斗がくまれ、それを基礎とした全国的な運動の視野もひらけてきます。われわれの観客の演劇への要求は質量ともに最高貴大のものであり、しかも日と共に進んでいます。この要求にこたえる事が演劇芸術家の任務であるとともに生甲斐そのものだといえます。  東日本リアリズム演劇会議は、それぞれの地点で観客に責任を負って民族的民主的な演劇の創造と普及のために、ねばり強い仕事を進めている仲間の集団が、この中に加わって会議を太らせ力をつよめてくれる事を心から期待します。われわれはこの結集をとおして、日本の演劇の未来像をいきいきしたビジョンとしてつかみ、歴史と国民から付託された重要な任務を果たします. 一九六三年八月二十五日 東日本リアリズム演劇会議